仙台市内は春の嵐に見舞われ、綺麗に咲いていた西公園の桜も散ってしまいましたが、過ごしやすい季節の訪れに気分は晴れ渡っております。
今回は、離婚事件における親権の決め方について、簡単に説明をさせていただきます。

親権の決め方については、法律に明文の定めがなく、裁判上の離婚の場合ですら「裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。」(民法819条2項)と規定されるのみです。この点、親権の決め方については親側の事情と、子側の事情双方を考慮した上で、子の利益となるよう定める傾向にあるとされています。

具体的には、親側の事情として、

①監護体制の優劣(たとえば、経済状態、居住環境、家庭環境、教育環境)
②子に対する愛情の深さ
③監護意思
④心身の健全性

などが考慮されることとなります。
一方で、子側の事情として、

⑤子の年齢(年齢が低いほど母性が重要であると判断されやすい傾向にあります。)
⑥環境の継続性
⑦子の意思(特に15歳以上の子については、子の意思が重視されます。)

などが考慮されます。

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このような事情が争われた事案として、生後1年にも満たない子どもの親権が争われた事例がありました。私は、お母さん側(以下では「依頼者」といいます。)の代理人でした。このケースでは、子側の事情としては、まだ0歳児であり(⑤)、夫婦の別居後、数か月間にわたり依頼者の実家で面倒を看ていた(⑥)ため、依頼者に有利な状況でしたが、親側の事情については、一概に有利な状況ではありませんでした。

すなわち、相手側からは、依頼者に経済力がないことや、依頼者が経済力を補うために仕事に就いた場合には、十分に面倒を見られないのではないか、仮に子の面倒を依頼者の母が見るとしても、その母は身体障害を有しており十分な面倒を見られないのではないか、相手方の両親が育児に協力してくれる旨を述べており、相手方には育児のための環境が整っているといった主張がされたのです。
確かに、依頼者が復職しなければ十分な収入を得られません。かといって、復職すれば、子の面倒は誰かを頼らなければならなくなります。

そこで、相手方からの主張に対しては、復職しつつ子の面倒を見るための手配をすることにしました。
たとえば、依頼者の職場に、復職後の勤務時間を融通してもらうように相談するであるとか、依頼者の勤務時間中に子の面倒を見てくれる人物を母以外にも探すであるといったことです。
さいわい、依頼者の方の周りの方々は、協力的な方が多く、職場の上司の方も、依頼者の実家の周辺住民の方も二つ返事で、了解してくれました。

このような事情を整えることができたため、私はこれらの事情(+α)を書類にまとめて、以下のような主張をすることにしました。

・依頼者の経済力については、依頼者側が産休に入る前の年収は依頼者と相手方とで顕著な差異はないこと、母子手当等の収入もあること、依頼者の勤務先が雇用を継続することを誓っていることなどを根拠に、経済力の点で依頼者の方が著しく劣っているとはいえない。
・家庭環境については、依頼者の母の障害の程度は重くないこと、依頼者の勤務先が依頼者が母子家庭になることについて理解を示しており、依頼者が親権者になった場合には、勤務先の代表者や従業員が子の面倒を見ることを誓っていること、依頼者の実家の近隣住民が依頼者の子の面倒を見ることを誓っていることなどの事情から、家庭環境が十分に充実している。
・相手方は、依頼者と同居時に、依頼者やその子に対し虐待的行動をしていたこと、相手方が精神疾患を患っていることなどから、心身(特に精神)の健康状態が悪いことなど。

このような主張をした結果、相手方は親権を諦めました。

確かに、親権について(とくに15歳未満の子について)は、母と定められることが多いとはされております。
しかし、離婚後の子の生育環境や、経済状況を整えずにいた場合にも、母が親権者となるとは断言できません。
本件のように、仮に依頼者に有利な状況であったとしても、より確実に親権を取得できるような主張・立証を行うことは重要だと思います。

この件は仙台市以外の案件でしたが、当法律事務所では、この案件のように、仙台市以外の案件もお受けしておりますので、仙台市以外の方でもご遠慮せず、相談ください。

文責 仙台弁護士会所属 弁護士 松村幸亮