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被疑者が不起訴処分になるまで(刑事弁護事件)

先日、私が担当した刑事弁護の事案に、詐欺(刑法246条1項)の事案がありました。(この件も、仙台北警察署に勾留されていた事案で、前回の記事同様に、身柄拘束(勾留)からの解放も行いました。その点については、前回の記事と重複するため、割愛致します。)

概要としては、会社の営業で知り合った被害者の方(会社のクライアント)に対し、「あなた(被害者)の件を、優先的に進めるためにはお金が必要である。」等と申し向け、現金数百万円を騙し取ったという事案でした。私が初めて被疑者の方と接見した際、被疑者の方は「この件は、起訴になりますか。どうにか不起訴処分にできませんか」と尋ねてきました。

検察官が起訴・不起訴の判断をする際の考慮要素は、法律で定められてはいません。もっとも、法務省の定める事件事務規程75条2項20号には、不起訴とすることができる場合について「①被疑事実が明白な場合において,②被疑者の性格,③年齢及び境遇,④犯罪の軽重及び情状並びに⑤犯罪後の情況により訴追を必要としないとき。」とされています。

そこで、本件についてこれらの事情の存否について弁護士として確認すると以下のとおりの事情が分かりました。
①被疑事実の明白性
被疑者自身が犯行を認めていたこともあり、被疑事実は明白といえました。
②被疑者の性格
弁護士と面会している間の態度、犯行を認める姿勢、被害者の方への謝罪を述べている様子等から、必ず起訴しなければならないような人物ではありませんでした。
③年齢及境遇
年齢が若年であれば更正を期待できる、不遇な境遇であれば酌むべき事情もあるため、不起訴処分とすべき一要素になると理解されております。
被疑者は40代男性であり、特段酌むべき不遇な境遇もありませんでしたが、特段不利な状況もありませんでした。また、被疑者の方は、前科がなかったという点も不起訴処分を得やすい事情として存在しました。
④犯罪の軽重及び情状
被害額が数百万円に上っており、犯罪としては軽いとはいえませんでした。また、情状としても、自らの借金返済のために現金を受け取っており、動機の悪質性も認められました。
⑤犯罪後の情状
被害者に対して謝罪等を伝える機会がなかったため、犯罪後の有利な情状もありませんでした。

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このように、本件の場合、犯罪は重大犯罪であり、動機も悪質な悪情状のケースであったため、被疑者の方に対して、弁護士の見解としては「起訴される可能性が十分にあります。不起訴とするためには、犯罪後の情状として有利な状況にしなければなりません。具体的には、(弁護士を通し)被害者の方と示談を成立させ、被害を回復させることと、被害者の処罰感情が消滅したことを確認する書面を取得するのが重要だと思われます」と回答しました。
すると、被疑者の方は「もともと被害者に全額返金するつもりであった。その弁償金は準備できるから、示談交渉をしてほしい」等と述べたため、示談交渉を行い不起訴処分を目指すための弁護活動を行うことにしました(なお、被害者の方は仙台ではなく、県北にお住まいの方だったため、受任直後は被害者方まで弁護士が面談に行くことをも想定されました。)。

ところが、いざ交渉を始めると、被害者の方から、「被疑者が勤務していた会社から、既に被害金の弁償がなされました。けれども、その会社を信用できなくなったため、契約を解約することにしました。解約の手続をしたいと思っているが、すでに会社に発生した実費分があるらしく、契約を解約できない。契約金全額が返還されなくて困っている。」との情報提供を受けました。
そこで、被疑者の勤務先であった会社にも連絡をとったところ、同社の担当者から「確かに被害金の弁償はした。被害者の方との契約を解約する話はでているが、実費分を返還しないのは当然である。会社としては、被疑者に対し、弁償金の返還を求めたいと考えている。」との回答を受けました。

このように、勤務先の会社から弁償がされたことにより、実際の被害者の経済的な損失は消滅していました。一方で、経済的な損失を被った実質的な被害者は、被疑者の勤務先会社ということになりました。また、実際の被害者の処罰感情が消滅したことを確認する書面を取得するための交渉材料がなくなりました(通常は、示談金の支払を条件に処罰感情が消滅したことを確認させてもらうためです)。

そこで、私は、被疑者の了解のもと、実際の被害者、及び被疑者の勤務先会社に対し、以下の提案ををとることにしました。
① 実際の被害者に対しては、被疑者の勤務先会社から被害者に支払われない実費分(+αとして迷惑料)を賠償金として支払う。
② 実質的被害者である被疑者の勤務先会社に対し、同社が立て替えた弁償金を返済することで、被害者との契約解約手続を進める。
③ 実際の被害者に対し①の支払を行うこと、及び被疑者の勤務先会社との解約ができたことを条件に、処罰感情が消滅した旨を示談契約書に記載してもらう。

以上の方針が決定して以降は、すみやかに実際の被害者、及び被疑者の勤務先会社との間で示談契約を締結することができました。

その後、私は、仙台地方検察庁に対し、⑤犯罪後の情状として、被害者が実際の被害者に対して示談金を支払ったこと、同人の処罰感情が消滅したこと、実質的な被害者である被疑者の勤務先会社に対しても、同社が立て替えた弁償金を返済したこと、その他有利な情状(身元引受人がいることや、会社から解雇されたことにより社会的な制裁を受けていること)などをまとめた意見書を提出しました。
これらの弁護活動の結果、被疑者は無事に不起訴処分となりました。

刑事弁護は、限られた時間の中で常に事情が変動するため、それらをタイムリーに調整しながら有利な状況に導くことが求められます。
この件は事情の変動も負担も大きい事案でしたが、弁護士として丁寧な交渉と細やかな調整により、上手く事案解決をすることができた事例となりました。

 

文責  西公園法律事務所 弁護士 松村幸亮(仙台弁護士会所属)

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